たくさんの参加者をいただきご好評いただいた「秋田ワーケーションフェア2022」フェアを一緒に開催いただいた一般社団法人創生する未来さん(執筆井上猛雄さん)から、レポートが届いたのでご紹介します。(ビジネス+ITでの記事はこちらをご覧ください。

秋田ワーケーション推進協会、いよいよ本格始動!
秋田県初となる本格的な全国イベント「秋田ワーケーションフェア2022」を開催

1月27日と28日の両日、創生する未来らほか4企業が理事を務める秋田ワーケーション推進協会(会長秋田ケーブルテレビ代表取締役会長松浦隆一氏、会員数2022年1月現在111団体)が、ワーケーションによる地域活性化を目指し、「秋田ワーケーションフェア2022」をオンラインで開催した。
本イベントでは地域への交流人口や関係人口を生むインフルエンサーの講演などを中心に、ワーケーションの今後の動向や、人・仕事・企業を秋田へ誘引する事例や取り組みなどが紹介された。

仕事も遊びもたっぷり、ひとつの「輪」のなかに!
協会のポータルサイト・Wappaが開設!

まず本フェアを開催した主催者である秋田ワーケーション推進協会の目的から確認しておこう。
協会の大きな目的は以下のとおりだ。

  • 秋田県の地域プロモーション強化と他地域からの「人と仕事」の秋田県への誘引
  • 地域活性化事例の創出や情報発信の強化などの推進

これらを踏まえて、昨年12月に協会の公式ポータルサイトのわっぱ「Wappa」(Work vacation akita promotion association plus alternativeの頭文字)が開設された

秋田ワーケーション推進協会が進める支援活動のポータルサイト「Wappa」。
秋田の仕事環境、滞在施設、自然、温泉、伝統文化、食etcなど、ワーケーションに関わるさまざまな情報が集約されたサイトだ。

このWappa(https://workation.akita.jp/)には、充実した仕事環境と多彩な滞在施設、自然、温泉、伝統文化、食などの情報が集約されている。
仕事も遊びもたっぷりと、ひとつの「わ」のなかに入れて楽しんで欲しいという意味が込められているという。

コンテンツ計画の代表で、 Wappaのプロデューサーを務める有坂民夫氏は「注意したいのは、ワーケーションは地方だけが恩恵を受ける処方箋ではないことです。都市部から人を呼び込むという目の前の現象だけではなく、新時代の働き方の変革のひとつと捉えたほうが良いでしょう。また地域側で推し進めがちな、共感や動機の伴わない地域都合の課題解決を目的にしたワーケーションでは、人々は参加してくれません。地域の価値と課題の本質に向き合うために、いま一度フラットな視座で可能性を探す必要があるでしょう」と説明する。

コンテンツ計画代表有坂民夫氏。
Semboku Workplex & Wappa プロデューサーを務める。

有坂氏はプロデューサーとして、秋田県・仙北市のあきた芸術村わらび座に併設されたワーケーション施設「Semboku Workplex」(旧Semboku Complex)などの立ち上げにも関わってきた。

あきた芸術村・わらび座に併設されたワーケーション施設「Semboku Workplex」。
旧Semboku Complexを改修し、より仕事に適した環境にしたという。

ワーケーションの現状としては、こういった自治体・民間による新たな施設やサービスも続々と登場している。
その一方で、まだ企業側ではワーケーションに躊躇しているケースもあり、利用者側のニーズをしっかりと作り込む必要があるという。

有坂氏は「現時点では一人で10歩先を進むフリーや先進企業のテレワーカーと、10人で一歩を踏み出そうとする従来の企業ワーカーの動き出しの差が見られます。今後企業全体で100人、1000人が一歩を踏み出すことになると、大きな山が動き、周囲の風景も変わってくるでしょう。まさに2022年は政府のデジタル田園都市国家構想も含め、企業側の動きも活発になるかもしれません」と期待を寄せている。

そのほかの自治体・民間の活動や新たなサービスについては、次セクション以降で順次紹介していこう。

人肌感のない在宅ワークへのアンチテーゼ
~人材を育てるアナログ的な「合宿型研修」の効果

創生する未来では、コンテンツ計画など複数の企業と共に前出の「Semboku Workplex」の企画・立ち上げ・運営などに関わってきた。実は直近の2021年12月には、このスペースで「OneTeamワーケーション」が実施された。運営に携わった創生する未来の藤本有希氏が、企画の趣旨について触れた。

本イベントの司会も務めた、創生する未来藤本有希氏

まずはSemboku Workplexが位置する、あきた芸術村について簡単に触れておこう。
ここは日本の演劇界で3本の指に入る劇団わらび座の拠点だ。文化・娯楽・食・農業を抱合する施設として、ワーケーションにも最適の場所として知られ、わらび座の劇団員による「シアターエデュケーション」など、コミュニケーション力や自己認識力を高める独自メソッドの研修が好評を博している。

わらび座の劇団員による「シアターエデュケーション」の模様。
ペアになって言語をゼスチャーで表現したり、実際の台本をもとに演者になってセリフを言う訓練などを行ったりする。

Semboku Workplexは単なる仕事場ではなく、こういった付加価値のあるコンテンツを提供できることが大きな魅力と言えるのだが、さらに創生する未来では、わらび座ならではの研修を参加企業のニーズに合わせてカスタマイズし、今回のOneTeamワーケーションのような企画を組み立ててきたそうだ。

藤本氏は「在宅勤務だけでは、新入社員が人と直接会う機会がなく、会社との距離感が広がって、組織としての帰属意識も低下してしまいます。そこでアナログな合宿型研修によって、チームを1つにまとめるワーケーションが求められているのです」と力説する。

今回、参加した企業は大手ITベンダーのNECの一部門だが、本セッションの導入事例ということで関係者も登場した。
ワーケーションを実施した理由の1つは、やはり2年間のコロナ禍によって、長引くリモートワークから見えてきた課題があったからだという。

NECの塩津 進氏らを中心としたグループは「社内の人脈を築けないまま、いきなり在宅ワークを始めた新入社員はコネクションがなく、会話や相談のメンバーが限定されてしまいます。事業部の幹部とのコミュ二ーションも取れずに、仕事への向き合い方が偏向する恐れがありました」と振り返る。

NEC プラットフォームソリューション事業部 シニアエキスパート 塩津 進氏

NECでは、こういった人肌感のない在宅ワークへの危機感もあり、今回のOneTeamワーケーションに参加し、大きな効果と手ごたえが得られたという。
本事例の詳細については、別記事でお伝えする予定だ。

秋田美人のルーツ、あきた舞妓の復活で秋田の魅力を発信!

続いて、秋田県の強みを盛り上げていくという観点から、あきたの舞妓さんを復活させるプロジェクトが紹介された。

あきた舞妓の緒叶羽(おとは)(右)さんと佳乃藤(かのふじ)(左)さん。
「秋田美人」のルーツは谷崎潤一郎の小説から。まさに秋田市の繁華街・川反町の芸者さんや舞妓さんを指していたそうだ。

秋田といえば「秋田美人」というキーワードが思い浮かぶが、その知名度は抜群でも秋田の特産“商品”にはなっていない。そこで「秋田美人」を産業化するために、あきた舞妓事業が平成26年からスタートしたという。

かつての「秋田美人」とは、市内の繁華街・川反(かわばた)の芸者のことを指す言葉だった。谷崎潤一郎の小説で「秋田美人」として登場したことがルーツだ。大正から昭和まで川反町は栄華を誇っていたが、現在はコロナ禍も相まって閑散とした状況になっている。川反芸者も時代とともに減って、平成初頭には後継者がいなくなった。そこで途絶えかけた文化を再生すべく、あきた舞妓を現代に合う形で蘇らせるプロジェクトが始まったわけだ。

あきた舞妓は、単に以前の芸者衆の働き方をコピーをするのではなく、独自性の創造や進化に挑戦し、地域で誇れるような秋田美人の象徴を目指していくことがポイントだという。
介護施設で踊りを見せたり、正月の餅つき大会で交流を図るなど、地域に密着した活動も展開している。また、廃業した料亭をリノベーションした観光施設「あきた舞妓松下劇場」で毎週土曜日2回ほど公演も行っているそうだ。

廃業した料亭をリノベーションした「あきた舞妓松下劇場」。
現在の千秋公園内にあり、毎週土曜日2回ほど舞妓さんの公演が行われているそうだ。

ほかにも本イベントでは「あきた舞妓とバーチャル観光」も披露。
あきた舞妓の佳乃藤さんの故郷「にかほ市」の名所・名産品や、緒叶羽さんによる秋田オススメの観光スポット巡りなどが、写真を交えて紹介された。あきた舞妓の情報はYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UC2qmv2PLxvueYKTRTAXj4KQ/channels)にも多数アップされているので。ご興味のある方は、チャネル登録してみるとよいだろう。

公私に無関係な「共」(コモンズ)を持つ秋田・五城目町の強み

秋田県の中山間地・五城目町で活躍するシェアビレッジの丑田俊輔氏は、物理的な制約を超えて働ける社会を見据えて「マルチコミュニティを楽しもう」をテーマに、自身の活動について紹介した。

シェアビレッジ 代表 丑田俊輔氏

五城目町は、秋田県では観光地というよりも長閑な里山の雰囲気が強い。しかし朝市が500年以上続く土地柄で、地域に根差す暮らしが残されている。とはいえ少子高齢化もあり、学校の統廃合や遊休不動産も増え、残された資源を有効活用する動きも出ている。

たとえば、五城目町では廃校舎をシェアオフィスに改修し、部屋を民間に貸し出したり、ワーケーション拠点にしている。2014年まで東京で活動していた丑田氏も、ここでオフィスを借りているが、実際に住んでみて五城目町のポテンシャルを感じたという。

丑田氏は「家ひとつ取っても、町民がススキを刈って茅葺場を管理し、屋根の葺き替えを集落のコミュニティで行っています。共助感覚が暮らしに根付いており、このような感覚を都会人が感じられる場所が欲しいと思いました」と当時を振り返る。

そのような中で、同氏は解体寸前の築130年の古民家を受け継ぎ、その場所を村に例えた「シェアビレッジ」をスタートさせた。

「年貢という名の町内会費を支払うと、この古民家の村民になれて、第二の故郷として宿泊や祭りに参加したり、地域住民のお手伝いなどができます。2015年に開村し、全国からワーケーションに来る人が増えました」と丑田氏は説明する。

場所を村に例えた「シェアビレッジ」の仕組み。
年貢という会費を支払って古民家に集い、地域の手伝いやイベントに参加しながら地域交流を深められる。

シェアビレッジでは村の運営のために、寄合(オンライン交流会)、里帰(民泊)、一揆(音楽フェスティバル)、助太刀(困りごとの手伝い)などユニークな仕組みをつくり、コミュニティを活性化させている。

公でも私でもない「共」という価値観で地域参加型の自治を行う一方で、住民や子供たちやお年寄りが立ち寄れる「ただの遊び場」といった共同スペースや、街の図書室を小学校に移設して(地域の壁を)「超える学校」などもつくった。
東京・千代田区と連携し、越境入学の取り組み(子供たちのワーケーション)を進めたり、廃業になった温泉宿をクラファンで復活させたり、暮らしに自らが参加して仲間をつくれる場所に余白を与えている。

ただコロナ禍いなって活動にも制限が出てきた。そのため「コミュニティ×テクノロジー」により、村づくりに必要な技術を開発してきたという。たとえばコミュニティで使える独自コインも発行。

コロナ禍で行動制限される中での新たな取り組み。
コミュニティ内や複数コミュニティ間で使える独自コインを流通させ、年貢の決済に使ったり、活動の対価としてコインの贈与も可能。

またデジタルファブリケーションを組み合わせ、地域の材料で家づくりをする実験村のプロジェクトを準備中だ。

丑田氏は「地域の往来は、複数のコミュニティや経済圏を構築することにつながります。都会・田舎、貨幣・自給・贈与経済、公・共・私、仕事・遊び・町内会、法定通貨・コミュニティ通貨、スタートアップ・組合・非営利が混ざり合いながら、どれか1つに絞らずに進めていくことが大事です。また課題解決だけでなく、遊びや余白も活動を持続させる重要な要素になるでしょう」とまとめた。

全国展開への礎、福利厚生面からのワーケーションのアプローチも!

次にリロードクラブの芝田真之介氏が、企業の福利厚生面からのワーケーション展開に言及した。同社は、企業の人事・総務などに福利厚生代行サービス・福利厚生倶楽部を提供している。すでに全国に約1万4800社(従業員総計638万人)の会員企業を持ち、このマーケットを活用した地域振興プロモーションなども行っている。

リロードクラブ リゾート企画ユニット 地域振興グループ 芝田真之介氏

3年前から「ワーケーション」という言葉が現れたが、コロナ禍になりリモートワークが8割に達するなか、社員の帰属意識が薄れていくという課題も見えてきた。いまでは企業の7割が、その施策の1つとしてのワーケーションに興味を持つ状況になっている。

「しかし実際にワーケーションで誘客したり、プロモーションをどこに相談すればよいのか? といった声も聞かれます。そのような状況で、我々は福祉厚生の会員企業様や自治体様に対して、健康支援の一環としての情報発信と、ワーケーション調査や導入のお手伝いをしています」と柴田氏は説明する。

同社の福利厚生サービスなどを利用する約1万4800社の会員企業や自治体をターゲットに、効率的なワーケーション調査や導入が可能になる。

ただし現状の問題としては、企業側で興味があっても、ワーケーションの予算や制度の整備などが追い付いていないようだ。そこでリロクラブでは、企業側の環境整備から、ニーズ調査・PR、モニターツアーの造成と集客、成果報告までを、福利厚生面から使いやすいワーケーションにするために支援していくという。

同社が手掛けたワーケーション支援として、たとえば三重県の伊勢志摩で家族ぐるみのワーケーションや社員チームビルディング研修の実施例、温泉県の大分県3市での宿泊モニタープラン、美肌グランプリに輝く島根県で女性をターゲットにしたワーケーションモニタリング事業といった事例がある。

リロードクラブのワーケーション支援の事例。
このほかにも東京都・小笠原村、静岡県・熱海市、福島県・会津若松市、広島市・三好市などでも実績がある。

地域の課題解決を支援する
人材マッチングサービスとワーケーションの親和性

個人で自由に働くフリーランサーやパラレルワーカーなどが対象になりそうだが、最近では副業OKの企業も増えている。そんなワーカーを対象に「旅×シゴト」の可能性を提案しているのが「すごい旅人求人サービス」をキャッチコピーに掲げているSAGOJOだ。同社の井谷太一氏が同社のユニークな事業について解説した。

SAGOJO 事業統括責任者/執行役員 井谷太一氏

SAGOJOは、旅と仕事を結び付け、全国に人流を作り、地域の課題解決や関係人口の創出を支援する人材マッチングサービスのプラットフォーム(https://www.sagojo.link/)を提供している。
すでに世界120ヵ国で2万2000名以上の旅人(会員)がいて、旅をしながら地域課題の手助けをして、お金・モノ・サービスのリターンを得ている。旅人は自分が持つスキルを活かせるし、現地体験を通じて地域との関係性を強められる。

「地域案件は自治体や企業から依頼され、サイトで希望者を募集して旅人に仕事を遂行してもらいます。これまでの実績からもわかるように、SAGOJOの仕組みはワーケーションに親和性があります。たとえば奈良県では信貴山を舞台に、誘客・多角化に向けたワーケーションの企画やモニター・PRする旅人を募集し、SNS投稿だけで200万リーチを達成し、地域の魅力を発信できました」と井谷氏。

SAGOJOがプロデュースに関わった事業の一例。
奈良県・信貴山の宿坊ワーケーション。参加者のインフルエンサーがSNSに投稿し、200万リーチを達成したという。

コロナ禍によって人々のワークスタイルも変容し、「旅×シゴト」=「ワーケーション」という可能性も高まっている。SAGOJOでは、さまざまなワーケーションの形がある中で、地域の魅力を理解してもらうだけでなく、関係人口が増えることで地域を活性するチャンスになると捉えているという。

井谷氏は、自身の経験から今後ワーケーションを成功させるためのポイントとして、「仕事の環境を整備しておく」「内容を詰め込みすぎず定常スケジュールで実施」「仕事と遊びの時間のメリハリをつける」「体験者が地域の課題に触れ、継続的な″つながり″を持てるように準備する」という点を挙げた。

「このようなワーケーションのポイントを押さえることで、さらに地域の関係人口が増え、リモートワークと課題解決・お手伝い体験がつながり、ソトモノのファンのコミュニティができ、地域活性化に期待できるでしょう」という。

SAGOJOのワーケーション支援。
地域×ソトモノがお手伝いをして、地域にソトモノ・コミュニティができあがり、地域活性化や地方創生の礎になる。

SAGOJOでは、プロ人材や地域アンバサダー、お手伝い人材など多くの旅人を抱えている。地域関係者の宿泊施設などに無料で泊まって手伝いをする「TENJIKU」( https://tenjiku.sagojo.link/)というサービスモデルは、さらに人流の創出やワーケーションのドライブ役になりそうだ。

今回のすべての講演の内容はグラフィック・レコーディングでも分かりやすく紹介されている。こちら(https://workation-akita.main.jp/)をご覧いただけると、さらに理解が深まるだろう。

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