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【体験レポート】Akita de Workation College(男鹿市_後編)

 「⼼豊かに暮らせる持続可能な地域づくり」をテーマに2024年12月に男鹿市で開催された「Akita de Workation College」(秋田県主催)のセミナー&ワークショップ。Wappa編集部も参加してきました。前半後半の2回に分けて参加レポートをご紹介します(前編はこちら)。地域の魅力や課題と積極的に関わりたい、ワーケーションのコーディネーションやプロデュースに関わりたい方は必見のプログラムです。ぜひ最後までご覧ください。

プログラムの開催案内

男鹿市プログラム:「⼼豊かに暮らせる持続可能な地域づくり」(後編)

 午前中に「里山のカフェににぎ」のオーナー猿田真さんから、男鹿についてのたくさんのインプットをもらったカレッジ参加者。一行はバスに乗り、フィールドワークに出発です。

御一行様ってなんか、嬉しい。

 

車中でさらにローカルな情報をご紹介いただく猿田さん。地元の方にご案内していただくことで地域の輪郭がよりはっきりと見えてきます。

 北浦魚港。鈍色の海が冬の男鹿の情景です。ハタハタはかつて、船が沈むほどの量が漁れたそうです。

到着したのは、北浦漁港の人気料理店亀寿司食堂さん。こちらでお待ちかねのランチをいただきます。もちろんこちらも男鹿を知るためのフィールドワークの一環です。

一番人気の海鮮丼をいただきました。

お店のすぐ裏は北浦漁港。夏には活きウニや岩ガキ、今回はまだ水揚げ前でしたが、例年冬にはハタハタ寿司や「しょっつる鍋」など、旬の魚介類がいただけます。港から徒歩1分の食堂のお味について、通ぶってとやかくお伝えするほどヤボではありませんが(お伝えできる引き出しが無い)、その美味しさは召し上がった方の表情でお分かりいただけますよね。ぜひ男鹿にお越しいただいた際はご自身の舌で味わってください。

この表情で、私のつたない食レポは不要と判断させていただきました。

「亀寿司食堂·民宿 亀屋旅館」

住所:秋田県男鹿市北浦北浦栄町4-3

電話:018-533-2049

営業時間:11:30~14:00 17:00~21:00  
定休日:火曜日

次に、一行が向かったのは、猿田さんから午前の講義でご紹介いただいた。2年前に廃校となった。旧男鹿北中学校。フィールドワークの最後にはこちらの活用を参加者で検討します。

冬の学校は寒い!ということで参加者にはカイロが配布されました。ありがたい。

玄関までのアプローチは西洋を感じる丸柱の回廊

多くの方は「廃校」と聞くと、大正や昭和に開学した歴史ある木造の校舎を想像されるかもしれませんが、こちらは平成2年(1990年)に周辺の中学校を統合し、新たに開講した学校。32年間学び舎として使われた施設です。

先ずは学校の由来と閉校の経緯、現在について伺います。

ご案内いただいた男鹿市教育委員会の佐藤さん

こちらの学校の卒業生である猿田さんは、前半でお話を伺った新たな学びの場として活用する構想をお持ちですが、男鹿市としても廃校舎の利活用を進める取り組み「男鹿ではじめる校舎活用プロジェクト」を進めており、幅広いジャンル、テーマでの活用の応募を受け付けているそうです。

ということで、学校を一通りご案内いただきました。

3階のバルコニーに上がるとそこには眼前に広がる日本海!

どーん!ボキャブラリーが貧相ですが・・・素晴らしい景観です

 絶景にみなさん顔がほころびます。それにしても風が強い。

さっそくアイデア出しで盛り上がっていた受講生さん。刺激されるロケーションですよね。

 

凝った意匠、仕掛けられた遊び心、学び舎として男鹿の子どもたちの創造性を育んできた建物。バブル期に作られた影響もあるかもしれませんがとても立派です。

撮影者の世代的に見つけたら思わず撮ってしまう「3年B組」

可愛らしい図書室の椅子と蔵書。

ピカピカの状態で保存されている調理室。備品も当時のまま残っています。

 調理実習室に至っては、さえぎるものが何もないオーシャンビュー!料理イベントなどにいかがでしょう。

今も全国の国語の授業などで取り上げられている、室生犀星の詩「はたはたのうた」の額装がありました。母へ想い、望郷。廃校舎で読むといっそう沁みてきます。

 ににぎはオープン当初から知る人ぞ知る人気のカフェでしたが、居場所と受け皿とであることを意識し、ゆっくり育ててきたこの古民家カフェは今や男鹿を代表する人気カフェとなっています。

立派な体育館。こちらは現在も地域のスポーツ活動に利用されているそう。

トレーニングルームも完備

音楽室にはたくさんの楽器たちが

山側に目を向ければ、真山神社のある真山と奥に男鹿半島の最高峰本山が直線に見える稀有な眺望が

2025年の春には向かいの小学校も閉校となる

 当時のままに保たれた校舎からは、今にも子どもたちの歓声や、チャイムの音が聞こえてきそうで感傷的になりましたが「まるでリゾートホテルのような」と母校を表した猿田さんの言葉の通り、男鹿半島の自然景観や特徴を体感できる素晴らしいロケーションと施設でした。ご興味のある方はぜひご自身の目でご覧ください。(見学の際には、男鹿市教育委員会に事前相談が必要となります)

(旧)男鹿市立男鹿北中学校 男鹿ではじめる校舎活用プロジェクト

住所:秋田県男鹿市北浦北浦山王林40番地

問合せ・相談先:男鹿市教育総務課 総務班
電話:0185-24-9100

 学校を後にし、次に訪問したのは男鹿市に3つあると説明いただいた星辻神社のうちのひとつ、男鹿温泉郷に近い、北浦湯本地区にあるこちらの星辻神社。

バス停の目の前です。

ソファ完備。居心地の良さそうなバスの待合室

 平安初期、延暦(桓武天皇の代の元号)を縁起とする由緒ある神社、明治維新を機に北極星を崇める(北辰)信仰の北辰神社から改称したそうです。現在は真山神社で1月3日に執り行われる紫灯祭(せどまつり)は、もとはこちらで行われていたそう。「星空」をコンテンツとして活用する際には重要な構成要素となるこの場所で、猿田さんからあらためて男鹿と星のつながりについて教えていただきました。

立派な五輪塔、信仰の篤さが感じられます。

 一面の銀杏の絨毯でふかふかでした。

星辻神社

住所:秋田県男鹿市北浦湯本隠台34

電話:0185-33-3268

御祭神:天之御中主命(あめのみなかぬしのみこと)、大山祇命(おおやまつみのみこと)、宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと)、天照大神(あまてらすおおかみ)

フィールドワーク最後の訪問先は同じ北浦湯本地区にある温泉旅館ゆもとさん。Wappaにもワーケーション施設として登録いただいている温泉宿です。こちらには星辻神社からは歩いて向かいました。

溢れ出る源泉。かじかんだ手に生気が戻ります

温泉郷としても知られる男鹿の中でも、古くからお湯を守ってきた源泉掛け流しの温泉宿で、温泉地としての歴史や観光の今について伺います。

ゆもと(湯本)の堂々としたフォントに誇りを感じます。

 すっきりとしたレトロなエントランスロビー

”昭和”が香るラウンジはエモさ満点、砂壁がいい味を出しています。

この案内看板もカワイイ

お話を伺ったのは館主の大渕英悦さん

 

貴重な地域史の資料をもとに600年に遡る温泉地の始まり、当時全国の温泉を記した(人気ランキング)の「温泉番付」では小結となったこともある、幕末から明治期の発展、1810年、1939年の男鹿地震による湧出の変化、名物の石焼料理の開発経緯などについて教えていただきました

 そして話題は、男鹿温泉が抱える課題へと進みます。最盛期の11軒の温泉宿があった、男鹿温泉郷も現在は7軒(オーナー数は5)へと減少し、60軒以上の店が連なり組合さえあった飲食店は今や現在1軒のみ。時代を共にしてきた大渕さんには、その寂れた現状に忸怩たる思いがあります。

「(古くからの温泉地が廃ることは)大なり小なり全国の流れだが、旅館の論理で経営してきた。お客さんの方に合わせてもらってきた。もう少しちゃんとやっていれば、そうならなかった」そして「関わってきた人や組織は、今更でも過去を振り返って反省して次に進むことが必要」と赤裸々に想いを語ります。

和やかですが、地域の本質的な課題について意見を交わしました。

 課題も多い男鹿温泉郷ですが、ゆもとさんは猿田さんも関わったライブイベントを大広間で受け入れるなど、柔軟な発想で温泉を楽しむ機会を提供しています。またディスカッションでは何より湯量豊富で、泉質には絶対の自信があり、浴室の湯温はギリギリまで熱め(43-45℃)で設定していることなど、湯守りとしてのこだわりの一端を垣間見て、温泉への信頼と期待がさらに高まりました。貴重なお話をありがとうございました。

さあ、ではいよいよ入浴タイム!!

と、参加者が浴場に向かおうとしたところにカレッジ運営チームからは「ににぎ」さんに戻るように。との非情な移動指示が(泣)

 なんて、もともと時間通りではありますが、源泉並みに気持ちの熱い大渕館主のお話を伺えばお風呂に入りたくなるのが人情ですよね。ということで、 受講生は大浴場にご案内いただき、手で温泉の感触だけ確かめさせていただきました。お話しの通り熱めでスッキリした湯上がりになりそうなお湯でした。

みなさんが男鹿を訪問される際は、入浴タイムをスケジュールに忘れずに入れましょうね。(私には再訪の理由が一つ増えました)

熱めの湯がモットーのゆもと温泉さんの浴室。触っただけでも伝わる純度の高い温泉。豊富な源泉は床暖房や融雪にも使われているそう。

月日の積み重ねと温泉成分の濃さが表れた堂々たる湯口

温泉旅館 ゆも

住所:秋田県男鹿市北浦湯本福ノ沢36

電話:018-533-3151(日帰り入浴の際もご予約ください)

フィールドワークを終えた一行は午後の日差しを浴びながら「里山カフェ ににぎ」さんに戻ってきました。今回は半島北部の北浦、湯本地区のみでしたが、それでもこの密度とボリューム。男鹿にはまだまだ見るべき場所知るべきことがたくさんです。

ここからはプログラムの仕上げ、3チームに分かれて廃校となった旧男鹿北中学校の活用を検討するワークショップです。

各チームの検討が進みます。

課題、インプットともに多いだけに、アイデアだけでなく要件の整理やアウトプットの方法までを一気に考えるところも工夫どころです。

さあ、いよいよ発表タイムです。

最初のチームのプランは、子供が学んだ男鹿の体験を、親にストーリーとして伝える体験を核とした拠点作り。例えば石焼料理であれば、漁師と一緒に魚を獲り、桶を作り、料理もする。親御がずっと一緒にいないことが体験による遊びと学びの循環につながる。というもの。

アドバイザーのみなさんからは、「日本人より海外の人にほど向いているではないか」「国が推奨している“親子ワーケーション”は地域の産業や歴史文化も含まれるので男鹿ならではなら良い」「ひとつの体験の強さにグラデーションをつけることで商品化しやすくなる」などのコメントがありました。

アドバイザーの森重氏

次のチームのプランは、ジオパークに認定されている男鹿の地形にフォーカスした学びの場。特徴的なのは利用者の対象が外部の人だけではなく、地元の人も含まれていること。豊かかつ厳しい自然環境である特徴をSDGsの視点で食育や地域文化とともに伝えていく提案でした。

アドバイザーからは「ハタハタが来ないのは藻場のことだったり資源に限りがあることを考えなければいけない状況」「地域の方も参加するのは新鮮」「美食地質学という言葉があり、語り方の工夫で活かすことができる」などのコメントがありました。

最後のチームは、北風が吹きすさぶロックでダイナミックなロケーションと、男鹿で毎年夏に行われているロックフェスのレガシーを活かした「風とロック」の学び舎。海に向かってシャウトし放題な環境で、アーティストたちのスタジオとしての音楽室利用やイベント時のテント宿泊場所としての体育館、ロック世代が歴史を学ぶ場といった活用案が示されました。

アドバイザーからは「ぶっとんだアイデアだが宿泊のあり方が多様化できるのは良い」「発散をテーマに突拍子もないこアイデアだが、誰が何をどうするのかが明快」「ナマハゲは知っているが、秋田も男鹿は知らない人は多い。認知面で現実なアプローチ」などのコメントがありました。

ぶっ飛んだアイデアには若干苦笑いもしつつ・・・興味深く聞いていただいた猿田さん。ありがとうございました。

海は荒れ、寒風にさらされる冬の男鹿。しかし積雪の少なさからスノースポーツなどの冬のアクティビティはほぼ無く、ナマハゲの行事を除けば「今時期に男鹿に何さしに行ぐの?」と聞かれてしまうことも。そんな時期に開催されたカレッジでしたが、文化の地層に分け入れることで見えてくる奥の深さ、そして歴史ある地域のコミュニティであっても、今は地域外からの人材やアイデアが求められていることを知ることができました。

 前回から連続で受講しアクションの準備をしている方、猿田さんと共に男鹿の歴史文化をすため一歩を踏み出している方、自分が関わるテーマやフィールドを探している方、歩みはそれぞれでも、みなさんが辿った道がいつか「⼼豊かに暮らせる持続可能な地域」の道標になる。そんなことを感じたAkita de Workation Collegeでした。

集合写真のかけ声は「泣ぐ子はいねえがーっ!」

みなさんの表情をよくご覧いただければわかる・・・かな。

終了時はすっかり日も沈み、小雪の舞う空は厚い雲に覆われていましたが、満点の星空を心に思い浮かべ帰路につきました。

里山のカフェ ににぎ 

住所:秋田県男鹿市北浦真山塞ノ神下14

電話:018-527-8422 

※冬季は民宿のみの営業です(カフェはお休み)

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