【体験レポート】Akita de Workation College(北秋田市、大館市)
コロナ禍の4年を経て人が動き始めた2024年、ワーケーションや旅先テレワークのシーンでは、都市部の密を避け、風光明媚な観光地やラグジュアリーなホテルでPCを取り出し、こんな働き方も素敵でしょ。のような”映え”とプライベートな体験として自己完結するスタイルが、最初のムーブメントとして多く見られましたが、現在は滞在先の地域とより関わりあうスタイルなどバリエーションが多様化しています。そしてその流れはここ秋田でも起きています。
2023年10月から2024年1月にかけ、北秋田市、大館市で開催されたのが「ワーケーションで関係人口を学ぶ」をテーマにした学びのプログラム「Akita de Workation College」(主催:秋田県)。ここからワーケーションや旅先テレワークをきっかけとした”次の新しい働き方”や滞在スタイルが生まれるかも、そんな予感を感じつつ、Wappa編集部も受講生として参加してきました。collegeの受講生が新たなプランやサービスをみなさまにお届けするのはまだ少し先からもしれませんが、待ちきれないあなたに、地域と関わる魅力的な滞在プログラムとその舞台裏を、少しだけ先取りしてご紹介します。
各プログラムの開催案内
北秋田市プログラム:「発酵文化をリメイクする」
北秋田市はその名の通り秋田県北部にある人口3万人弱の町。
雪景色や田んぼアートなどで人気のローカル線、秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線が、秋田新幹線の停車駅角館駅(仙北市)から北秋田市の鷹ノ巣駅を結んでいるほか、秋田県北エリアの空の玄関口大館能代空港もあります。
2023年11月に開催されたcollegeの舞台は、秋田内陸線の比立内(ひたちない)駅の駅舎を漬物加工所や多目的スペースにリノベーションしたその名も「阿仁比立内がっこステーション」
最近は全国的に熊の出没が話題になっていますが、比立内一体はマタギの里として、自然との共生が古くから続いてきたエリアです。
ご覧の通り、さまざまなところに熊(がモチーフの造作物)が”出没”しています。
駅舎正面から。鮭をフィッシュオン!した熊がお出迎え。
ローカルな風景がたまりません。徒歩圏内には飲食店や産直店が入る道の駅「あに」もあります。
駅舎の中が「がっこステーション」です。
北秋田市のcollegeのテーマは「発酵文化をリメイクする」。地域のベテラン女性を指導役に、漬物作りの実践と試食をしつつ、Z世代に刺さる漬物のレシピを味・見た目・販路の3つの切り口で考案するというユニークなプログラム。がっこは食べるだけでも充分嬉しいのに、地元の人たちと一緒にがっこづくりを体験して、さらに商品企画まで作れるなんて、かなり特別感があります。
モダンにリノベーションされたがっこステーションには周辺地域の方がたくさん集まっていました。
そして駅舎内には漬物加工所が併設!これががっこステーションの名前の由来です。
こちらが本日のお題です。かなり本格的(!)
がっこステーションの運営や地域活性で活躍する合同会社Anique(アニーク)の佐々木宗純さんに活動や「がっこ」の基本を教えていただきました。
そしてウォーミングアップが済んだところで、いよいよcollegeのメインプログラム「発酵文化をリメイクする」のワークスタートです。どんな人が、どのような味の「がっこ」を好むか、アレンジしたレシピ、プロモーションをその場に参加した方々(基本的に初めてお会いする方々)でグループを作って考えました。
時折通る秋田内陸線、乗客のみなさんが手を振ってくれました。こんな心の交流がローカル線の素敵なところ、和みます。
そして頭だけではなく体も使ってがっこ作りの真髄を教わります。
みんなで作る。それだけで楽しいよね。
お楽しみは試食タイム。もちろん美味しい秋田のお米で作ったおむすび、そしてがっこの盛り合わせ!
こちらががっこの盛り合わせ。お米とのコンビネーションは令和の時代でも最強です。
この粒立ち。がっこ→おむすび→がっこ→おむすび…美味しさの無限ループ、誰か止めて(笑)
最後は各グループで発表を行いました。
11時に始まりたっぷり半日のプログラムでしたが、時間が経つのを忘れるほど夢中になったプログラムでした。またスタートの時は「初めまして」で、お互い緊張していたグループワークのメンバーともいつの間にか打ち解け、終了時にはチームとしての一体感も生まれたり、食を通じたプログラムとワーケーションの相性の良さを再認識できました。会社の研修やチームビルディングへの活用にも最適です。
今回collegeの参加者が考えたがっこの商品企画はこの場限りのものですが、もしかするとそのエッセンスの一部が今後がっこステーションの商品にも反映されるかも(?)買うだけ、食べるだけでは知ることのできない、がっこに秘められた力(もちろん課題も)と可能性を感じるプログラムでした。
がっこステーションは、プログラムのコーディネートとファシリテーションを担当された、合同会社Anique(アニーク)さんが運営しています。今回のプログラムがメニュー化されていなくても体験してみたい!こんな体験をしてみたい!という方はAniqueさんに相談してみてください。(Wappa編集部)
問い合わせ・ご相談先:合同会社Anique(阿仁比立内がっこステーション運営)
大館市プログラム:「秋田犬のふるさとで考える地域課題の解決」
次のcollegeの舞台は同じく秋田県北エリアの大館市。人口約6.5万人の歴史ある中核都市です。
そして大館といえば、その人気が世界で高まり、市の名前よりも知名度が高い(失礼💦)秋田犬(あきたいぬ)に会うことができる”秋田犬のふるさと”。
市内各所に秋田犬と触れ合ったり、学ぶことができる施設やスポットがあり、秋田犬ラブな人にとってはまさに聖地です。そして「秋田犬」という犬種名と、その忠犬ぶりを知らしめた立役者が大館生まれのご存じ、忠犬ハチ公。2023年はハチ公生誕100年の記念イヤーとして、多くのイベントが行われました。
他にもお祭りなどの伝承文化、きりたんぽ、比内鶏、馬肉、日本酒、温泉などグルメも含めて魅力的な大館市ですが、人口減少や高齢化など地域課題もたくさんあり、課題解決に取り組んでいます。
今回のcollegeは、地域の魅力を代表する「秋田犬」をキーワードに、その魅力と資源を地域の課題解決に活かすことをテーマに、地域のキーパーソンと、内外の参加者が参加し実施されました。
大館プログラムのメイン会場となったのは、Wappaでもご紹介している大館駅前のワークスペースMARUWWAさん。さまざま人が集う地域の拠点です。
プログラムのスタートはMARUWWAを運営するいしころ合同会社石山拓真さんの事業紹介。さまざまなアプローチとデザインの力で地域資源に新たな価値を付加しています。また、石山さんは特定非営利活動法人「大館学び大学」の代表理事もされていて、たくさんの講座を主催し地域人材のスキルアップにも取り組んでいます。石山さんからは活動の実績とともに、地域の事業者として感じている課題、活用しきれていない資源についてのインプット、また「犬都大館市」のコンセプトのもと、大館市を世界一犬が暮らしやすい町としていくための課題やアイデアを示していただきました。
続いてもうひとりの地域のキーパーソン、大館発の”昆虫の力”を活用したユニークなビジネスを全国で仕掛けている株式会社TOMUSHIの石田健佑さん(大館市議会議員でもある)のお話を伺いました。
カブト虫の力を使い、廃棄物を資源としてリサイクルするというTOMUSHIさんのビジネスモデルは、大きく注目され急成長しています。
そして、collegeの参加者一行はバスに乗り込み、大館の地域資源を直に体験するフィールドワークに向かいます。
到着したのは大館駅から車で5分ほどの場所にあるふるさわ温泉。泉質の良さはもちろん、秋田犬に会える温泉として、海外からもお客さんが訪れる人気の温泉宿です。
秋田犬の華(はな)ちゃんがお出迎え、奥に見えるのは日本最大級の木製ドーム「ニプロハチ公ドーム(大館樹海ドーム)」
地域の方に愛されている温泉。今どき日帰り400円は安いですよね。
たくさんの人が秋田犬との触れ合いに訪れています。
女将さんに宿とサービスの特徴、秋田犬についてご案内いただきました。
そして、みなさんお待ちかねの秋田犬との触れ合いタイムに突入。
やさしい性格の秋田犬ですが、そこはやはり大型犬、ルールとマナーをしっかり守りましょう。
ふるさわ温泉さんのすごいところはこの記念撮影のサポート。こんなふうにご機嫌と関心を惹いてベストショットを演出していただけます。これは記念になります。
参加された方に許可をいただき、仕上がりを見せていただきました。これは待ち受け確定なヤツですね。羨ましい。。
帰りにはお見送りも。お湯だけではく、おもてなしもあたたかい。ほっこりとしたふるさわ温泉さんでした。
大館の街なかに戻り次に向かったのは秋田犬会館。公益社団法人「秋田犬保存会」が運営する施設で、3階の秋田犬博物室には天然記念物である秋田犬に関する資料などが展示されています。ここでも秋田犬がお出迎えしてくれました。
こちらにも訪れた各地の方からのメッセージが。秋田犬の愛されぶりをあらためて感じます。
保護と繁殖を主たる活動目的のひとつとしている秋田犬保存会さん、1階の受付では生まれて間もない仔犬に出会うことができました。
はい、カワイイ。
参加者のカワイイが止まりません。
博物館に移動し、ここからはしっかり秋田犬の歴史と文化を学びます。
日本で唯一と言われる犬をご神体とした老犬神社の資料展示。ここにはハチ公の物語のはるか前、江戸中期にあったといわれる『忠犬シロ』の物語が伝えられ、秋田犬文化の原点として知られています。ご興味がある方はぜひ訪問して詳しくご覧ください。
秋田犬を使って狩猟を行なっていたマタギの暮らし、秋田犬は以前「マタギイヌ」とも呼ばれていたそうです。
秋田犬会館ではこの他、ルーツ、血統と繁殖、歴史上起きた秋田犬に関する諸課題など、カワイイだけではない秋田犬に関する深い知識を得ることができます。
最後に訪問したのは大館駅前にある「秋田犬の里」こちらは大館市が運営する2019年にオープンした観光交流施設。建物は忠犬ハチ公が飼い主を待ち続けた大正時代の渋谷駅をモデルにしているそうです。
敷地にはかつて渋谷駅を発着駅としていた東急東横線で活躍した5000系車両、通称「青ガエル」も展示されています。
秋田犬の里の館内。どなたでも気軽に入ることができる無料施設でお土産などが揃っています。
この施設ではガラス越しの対面ですが、ここなら小さな子供でも安心して秋田犬と「友達」になることができます。
施設見学の後は、大館市による秋田犬を活用した地域振興施策について、市の職員と実際に取り組んでいる地域おこし協力隊「秋田犬チーム」の方から、飼い主の高齢化、飼育にかかる負担の大きさ、行政の施策として行うことの難しさも教えていただきました。
一日を通し秋田犬の魅力だけでなく、歴史と背景、直接関わっている方の声を聞き、多面的に秋田犬の課題と可能性を知ったcollegeの受講生たち。
スタート地点のワークスペースMARUWWAに戻り、最後は秋田犬をとりまく課題と可能性をどうやってワーケーションや企業誘致に結びつけていくことができるのか、10年後、20年後のビジョンを描くのか、事業プランを検討して発表しました。
終了時はすっかり日も暮れて・・・充実したcollegeのプログラムは無事終了しました。今回訪問した施設は基本的にどなたでも利用することができる場所ばかり。課題意識を持って地域の方からのお話を聞き、考える場が用意されていたことで、秋田犬への理解が深まり、町の輪郭がよりはっきりと見えてきました。ストレートな観光だけでは、おそらく辿り着けなかった秋田犬のふるさとの今。みなさんも大館で体験してみませんか?そして、collegeの受講者から、新たなワーケーションサービスや地域と関わるプログラムが始まった際にはWappaでご紹介します。どうぞお楽しみに!(Wappa編集部)
問い合わせ・ご相談先:いしころ合同会社(MARUWWA運営会社)
秋田犬保存会(秋田犬会館運営会社)
追記:大館市中心部は飲食店のほか、温泉が完備されたビジネスホテルや飲食店、品揃え豊富なスーパーマーケットなどが多数あり滞在のバリエーションが豊富なエリアです。たっぷりと秋田犬に触れた後は美味しい食事も忘れずにお楽しみください。
最新の情報は各施設、サービス提供者に直接お問い合わせください。