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【体験レポート】Akita de Workation College(男鹿市ー前編)

 「⼼豊かに暮らせる持続可能な地域づくり」をテーマに2024年12月に男鹿市で開催された「Akita de Workation College」(秋田県主催)のセミナー&ワークショップ。Wappa編集部も参加してきました。前半後半の2回に分けて参加レポートをご紹介します(後編はこちら)。地域の魅力や課題と積極的に関わりたい、ワーケーションのコーディネーションやプロデュースに関わりたい方は必見のプログラムです。ぜひ最後までご覧ください。

プログラムの開催案内

男鹿市プログラム:「⼼豊かに暮らせる持続可能な地域づくり」(前編)

 実施日は12月6日。朝から雪混じりの強風で、なぜか天気には恵まれないAkita de Workation Collegeですが、今日12月6日は秋田県民の魚食文化を代表する鰰(はたはた※以下ハタハタ)の記念日その名も「ハタハタの日」! 漁期の初日が例年この日である(ことが多い)ことから男鹿市商工会が定めたそうです。「魚へん」に「神が鳴る」と書き鰰の名前の由来は、雪が降る前の雷が鳴る頃に漁れることから来ているのだとか(雷神の古名でもある)。そんなめでたい日だと思えば、荒天も吉兆と解釈して、今回も元気に参加です。 

こちらがハタハタ。近年漁獲量が減り高いのが切ない・・・(写真は昨年以前のものです) 

シーズンには特設販売所がでる地域も (写真は昨年以前のものです)

 秋田市方面から県道42号線で男鹿半島を目指すと、続々と男鹿の民俗行事「男鹿のナマハゲ」にちなんだあれこれが登場するのも楽しみのひとつ、まさにナマハゲ半島です。

ナマハゲがお出迎え。

本日のカレッジの会場となったのは、男鹿半島の北側、奥に男鹿の霊山・真山を望む里山にある人気のカフェ&農家民宿「里山のカフェににぎ」さん

会場には、観光、交通、金融、通信、マーケティング、IT、地域課題などさまざまなフィールドで活躍する多彩な方が集まりました。前回のカレッジに引き続き参加の方も。

 本日のプログラムの説明につづき、カレッジのアドバイザーで日本のワーケーションの発祥地と称される和歌山で、数多くの受入やコーディネートに携わっていた南紀白浜エアポートの森重良太さんからは「男鹿で人を呼び込む場合は、ナマハゲやお酒などが思いつくと思うが、単に地域に来て消費をするだけではなく、地域の課題に取り組んでいただく関係を作る、歴史文化に触れてもらいながら関わっていただくことを意識して、明日から男鹿のことを想像して参加して欲しい」とアドバイスをいただきました。

 そして本日のプログラムの地域コーディネータを担当いただくのが「里山のカフェににぎ」の店主・猿田真さん。先ずは「ににぎ」ができた経緯、猿田さんから見た男鹿の今とこれからについてお話を伺いました。

ににぎ店主の猿田真さん

 もともと男鹿半島の付け根に近い若美地区が出身の猿田さん。北浦地区に住んでいた祖父が亡くなり、家の継ぎ手として今のににぎの近くに移り住んだことがことがきっかけでした。自分の家の庭のように男鹿温泉を利用し、景気が良かった時代に男鹿で育った猿田さんですが、絵を描くのが好きだったこともあり高校卒業後は状況し美術の専門学校に進学。漫画、音楽、芝居など、東京のカルチャーの洗礼を受けどっぷりと浸かり、また、世界を知るため様々な仕事を経験した青春時代を過ごしましたが、早くして父親を亡くしたこともあり、家族からの帰郷の願いに応え男鹿に戻ります。

 東京で熱心に遊び、学び、やりきった感があった猿田さん。東京で成功することのシビアさも感じていたこともあり、帰郷することで男鹿に故郷を持つ自分ならではの人生の活路を見出せるのではないかと期待したものの、戻った際は一度都会に出た余所者扱いをされることもあり、しんどさを感じた時期があったそうです。それでも「少しずつ趣味の合う仲間もみつかり、自らのアイデンディティを取り戻していった」と田舎と都会のギャップ、Uターンの難しさについてお話しいただきました。

 ににぎさんの店内にも音楽や漫画などPOPカルチャーがディスプレイされています。

 男鹿では介護から不動産の事務、選挙の手伝いなど地域の仕事をこなしてきた猿田さんですが、2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、その考えに変化が起きます。「せっかく戻ったのに、なんのために今の仕事をしているのか」そして「自分のように地元に戻ってきた時に、居場所や受け皿となる場所があった方が良いのではないか」これまでの経験と故郷・男鹿に対する様々な思いが「里山カフェににぎ」を生み出す原動力になりました。

 ににぎはオープン当初から知る人ぞ知る人気のカフェでしたが、居場所と受け皿とであることを意識し、ゆっくり育ててきたこの古民家カフェは今や男鹿を代表する人気カフェとなっています。

ひとつひとつ吟味し整えられた道具や設え

 そんな猿田さんはカフェの経営にとどまらず、地域文化の継承や歴史の活用などにも積極的に取り組んでいます。現在男鹿では高齢化、空き家などが大きな課題となってますが、以前不動産の仕事をしていた猿田さんは当時から将来の危機を感じていました。また、ナマハゲなど民俗行事を継承してきた団塊世代も次々とリタイアし、次の担い手である団塊ジュニア(ご自身の世代)も親の介護や子育てに時間を取られ、いよいよ継承ができなくなっている現実を受け、このまま黙ってはいられないと自ら動く選択をしました。

「ナマハゲは観光としては大事だけれと、漁業も含め持続が大変な中で、観光だけに(資源が)集中してもやっていけない。そもそも地域に人が残り地域の営みがなければ観光もない」と猿田さんは訴えます。しかし「それでも、男鹿には(東日本大震災の時のような)災害時にも公共に頼りきらなくてもよい、自立した営みの基盤と文化がある」と、可能性と希望があることも伝えました。

 様々な課題がある中、猿田さんが次の取り組みとして可能性を感じ実践しているのが、時代に合わせて変化し、人々がつながるコンテンツ作り。

 そのひとつは、これまで地域外の方を受け入れることに決して前向きではなく、自分自身も積極的に関わってこなかったナマハゲ行事に地域外から参加できる道を作っていること。

 これまでと同様の地域コミュニティの住民だけでは存続が極めて難しいなか「本当に残していく価値があるのか、頑なに残していくことが良いのか、時代によって変化していく部分のあっても良いのではないか」猿田さんは、これからの時代に合わせた変化を模索し、地域外の方の“関わりしろ”を作るために動いています。

 ナマハゲの衣装「ケデ編み」に用いられる稲藁を使った装飾品や道具も今は作り手が減少し需要に応えることが難しくなっているそう。

 もうひとつは星空。男鹿にはその名に星を関する「星辻神社」が3つあるのだそう。ご自身の苗字の由来である「猿田彦」は、神話の世界で星座に表れる神とされていることも含め、男鹿は古くから北極星(北辰)を崇める信仰が篤く、星と関わりが深い地域。

 平安時代から続き毎年1月3日行われる「柴灯祭(せどまつり)」も、開催の翌日が流星群が出現する日であることから、星の信仰との関わりの深さに注目しています。

「皮肉だが人が少なくなり、生活の光が少なくなったことで、星空はより綺麗になっている。星はポピュラーなコンテンツだけれど、人口減少地域だからこそ目指せるのではないか。何よりここには星の信仰がある」

 星空をテーマに、今猿田さんがつながるコンテンツとして目指しているのは、民間の国際団体が指定する「星空保護区」の活用。暗く美しい夜空を保護・保存するための施策や教育を推進する、この保護区の取り組みに共感し、現在数カ所の指定されている日本の、次の保護区として指定を受けることを目標としています。

 星空が地域コンテンツとして男鹿に加わることで、今主流となっている日帰り滞在では無く、宿泊を伴う滞在を促すことができ、それをきかっけにした男鹿の良さ、深さを感じてもらえるなど、その効果の広がりが期待できます。そして、この動きと合わせて必要性を感じているのが、滞在中に男鹿の文化を学ぶ、学校のような場。そのフィールドとして候補としているのがご自身の出身校で、2年前に廃校となった旧男鹿北中学校。バブル期に作られた学校はリゾートホテルと見紛うような立派な校舎なのだそうです。

 最後に「自分自身は個人事業者で、できることは限られている。今回参加いただいた方の中にはすでに(猿田さんと)つながって一緒に活動している方もいるが、より多くの仲間が必要。一緒に礎(いしずえ)を作りたい。それが今回のワーケーションに求めていること」とカレッジに参加された背景をお話しいただきました。

 カレッジの受講生からは「こんなに素晴らしいたくさんの観光資源のある男鹿がダメになるようなら、秋田の観光そのものもダメになってしまう」など、愛のある鋭い指摘があがり、この後のフィールドワークに向け気持ちも整いました。

昼食、そして午後のフィールドワークでは廃校、神社、温泉の訪問などに続きます。

後半のレポートはこちらからご覧ください。

里山のカフェ ににぎ 

住所:秋田県男鹿市北浦真山塞ノ神下14

電話:018-527-8422 

※冬季は民宿のみの営業です(カフェはお休み)

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